第2部
十三 平和憲法のもと適切、着実な国際貢献を果たします
2000年における南北朝鮮首脳による平和に向けての対話ほど、北東アジアにとって明るいニュースはありません。もっとも、それは、手放しで警戒心を解いてよいほどのものでもないことに留意する必要があります。90年代における朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核疑惑や日本海と太平洋三陸沖へのミサイル発射と見られる事件、さらには台湾海峡における中国のミサイル演習事件は、その性質は違うものの、21世紀における北東アジアの平和と安全に大きな不安を感じさせる要因になっていることには、基本的にいささかの変化もありません。
とりわけ、北朝鮮が飛距離2000キロを超える射程のミサイルを持ったことが確実視される点は、かねて予想されていたとはいえ、ミサイル防衛に無防備である日本の現状を白日のもとにさらけだしました。これに対しては、過剰な反応ではなく、冷静で沈着な対応が望まれます。
日米ガイドライン関連法の成立で、日米信頼関係がより一層堅固なものになり、21世紀の北東アジアにおいて不測の事態がおこらないための「抑止」が働くことが期待されます。日本は、平和憲法の範囲内でできる国際貢献に積極的に取り組むとともに、危機管理体制の整備をさらに充実させ、文字通りの平和国家をめざす必要があります。公明党は、戦争放棄をうたった憲法の精神のもと、平和で安全な日本としてアジア各国からも一層の信頼を勝ち得るように、努力を続けていきます。
1 日本の安全保障構想の基本的視座
日米安保条約体制を引き続き堅持するなかで、領域保全に徹する「専守防衛」に限定した力を持つことが、現実的な日本の安全保障構想であると考えています。集団的自衛権を日本が行使することについては、憲法上許されないとの考え方に立っています。一方、国際社会における平和と安全を確保するための、日本の貢献策については、国連平和維持活動(PKO)を中心にするべきだとの態度です。いわゆる集団安全保障については、憲法の禁ずる海外における武力行使を伴う可能性があるだけに、国連安保理の決議に基づくものであっても、慎重でなければならないとの姿勢です。
2 日本の安全と当面する課題
(1)沖縄を平和の拠点島に
沖縄に過度に集中した在日米軍基地の整理・縮小については、日本全体でその負担と痛みを分かち合うことについて、国が責任を持って解決をはかる必要があります。米軍の東アジア戦略の要石としての位置を21世紀も固定するのではなくて、むしろ日本の平和戦略の象徴の島としての役割を明確にしなければなりません。その意味から、沖縄への国連アジア本部の創設を働きかけ、北東アジア安全保障会議の事務局を常設するなど、平和の拠点島・沖縄を世界に宣揚することを提案します。
沖縄における在日米軍基地は、多発する米兵犯罪やPCB汚染問題など、日米地位協定をめぐる課題を抱えています。このため日米地位協定については、見直しを視野に入れつつ、さらなる運用改善を迫ってまいります。
(2)ミサイル防衛とその対応
隣国の軍事的挑発に対応するためにミサイル防衛が領域保全のために必要な手段として新たに求められてきます。TMD(戦域弾道ミサイル防衛)は、現実に配備するとなるとさまざまな問題点があるものの、抑止力の前段階としての技術研究などは怠らず準備する必要があります。もちろん、国際世論の高まりを背景に、可能な限りの「対話」を軸にした外交手段を展開しつつ、平和な環境を醸成することが同時に急がねばならないことを銘記する必要があります。
3 国連平和活動としての集団安全保障とPKOへの対応
(1)国連容認の多国籍軍でも参加は慎重に
国際社会における紛争発生に際し、多国籍軍などが編成されて、軍事的制裁措置が講じられる場合があります。そうした事態には、たとえ国連が容認するものであっても、慎重であるべきだとの態度です。国連における平和活動への参加は、PKOへの参加を主軸にし、それ以外のものについては、戦闘行為と一体化しない場合に限り、後方地域における武器、弾薬の輸送など、それぞれケース・バイ・ケースで慎重に判断すべきだと考えています。
(2)PKOへの参加は積極的に
PKOは、カンボジア型のような伝統的なものについては、今後とも積極的に参加することを求めていきます。その際に、凍結されているPKF(国連平和維持隊)本体業務は、この数年間の経験を踏まえ、解除されるべきであると考えます。
ただ、国際社会の現実では、さまざまな民族、宗教的対立など新たな紛争要因が発生、当初予定した国家間の紛争終結後に再発を防ぐためのものといったこととはまったく別の事態が多発、それへの対応が迫られています。そうしたことについて、現行法のままでは対処しきれないため、新たな見直しが迫られています。公明党は、あくまで憲法の枠内で、どうすればより的確な対応ができるかについて、引き続き検討を加えていく構えです。
4 軍縮の促進に向けての具体的提案
21世紀を戦争や紛争のない平和な世紀にするためには、具体的に軍縮を進める必要があります。公明党は、かつて防衛費GNP1%枠の設定や、非核三原則、武器輸出三原則などを提案してきました。新時代を迎え、より一層キメの細かい軍縮への提案が必要です。
その第一に、まずアジア太平洋地域各国の軍事支出や兵器貿易に関する調査・研究機関を設立することを提案します。また、第二に、アジア太平洋地域における、軍事産業から民間産業への転換についての専門家のネットワークを組織化することを提案します。さらに、第三には、武器輸出三原則いわゆる武器禁輸原則を厳守し、軍事拡張につながる対外経済協力を行わないために、同原則の法制化を提案します。
5 危機管理体制の整備と防衛出動法制の提案
(1)領域警備への対応――現行法を適切に運用
90年代の日本は、阪神淡路大震災、オウム真理教事件、不審船侵犯事件などの経験を通じて、危機管理体制の確立の重要性を強く認識するに至りましたが、わが党は、危機管理体制の充実をさらに求めていきます。
特に、領域警備については、新たな法整備を求める動きがありますが、当面は、現行法で対処すべきだと考えます。危機管理に万全を期するために、関係各省庁の連携など現行法の運用面の改善や適切な船舶や航空機などの整備の充実をはかることが必要です。その上で、中長期的な課題として、現行法の枠組みにおける法制上や運用上における不備を点検したり見直す議論は、積み重ねるべきであると考えます。
(2)緊急事態への対応――防衛出動法制の提案
日米ガイドライン関連法案の審議を通じて、日本そのものに対しての武力攻撃が起こり、国民の生命、財産が直接に脅かされるという緊急事態が発生した時に、必要にして最小限の対応措置が取られなければならないとの指摘がなされました。それが自衛隊など関係各機関によって超法規的なものになってはならないことは当然です。わが党は、これを防衛出動に伴う緊急事態への対応措置として、あくまで憲法の範囲内という原則に基づいた防衛出動法(仮称)を整備するように提案します。
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