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5月31日、2002年のサッカーワールドカップの開催が、日韓共同開催という形で決着した。
日本が2002W杯開催に名乗りを上げたのは1989年。91年6月には長沼健会長、岡野後一郎(実行委員長)、川淵三郎(Jリーグチェアマン)両副会長ら日本サッカー協会の首脳を中心に招致委員会を設立した。日本のサッカーを普及発展させるためには、世界最大のサッカーの祭典を日本で開催することが不可欠と考えたからだった。
W2002杯を開催することによって15の都市にスタジアムが整備されるし、芝生の練習湯も造られる。一般ファンのサッカーに対する関心が高くなり、ハード、ソフト両面で充実する。さらに1兆3千億円を超える経済効果もあるといわれている。
日韓共同開催は、31日の国際サッカー連盟(FIFA)理事会でアベランジェ会長を含めて21人の理事の投票によって決められた。理事全員の全会一致での結果だといわれている。
日韓共同開催への動きは、今年3月から活発になった。アジア連盟のアーマード会長(マレーシア)が、日韓共同開催の可能性をFIFAとして検討すべきだ、と文書を送付したことに始まる。
アベランジュ会長は、ルールにないと即時に否定した。
それでも4月に、ヨーロッパサーカー連盟(UEFA)が、共同開催の可能性を探るよう要望書を提出した。
さらに、アフリカ連盟のハヤトウ会長も共催への支持を明らかにした。
そして5月23日、ローマで開催されたUEFAの拡大理事会で共同開催支持が確認され、31日のFIFA理事会に共同提案された。
共同開催の中心者は、FIFA副会長でもあるUEFA会長のヨハンソン(スウェーデン)氏。「FIFAの調査では、日韓両国の開催条件に全く差がない。全く差のない両国に勝者と敗者を作ることはできない。日本と韓国の平和友好のためにマイナスになる」と、その理由を述べている。
あくまでも、単独開催を望んでいた日本にとっては、日韓共同開催へのハードルはまだ高い。
日韓共同会への歩みは、単に日本と韓国の招致合戦という次元を超えて、FIFA内部の複雑な権力闘争の結末であるという側面も持っている。
「会長による干渉は望ましくない。もし彼が、中立という言葉を忘れてしまったのなら、我々は権力の乱用という、不幸なケースと遭遇することだろう」。鄭夢準・大韓サッカー協会会長がアベランジェ・国際サッカー連盟(FIFA)会長を強く批判した記事が今月15日、AFP通信によって世界に流された。
鄭氏が反アベランジェの姿勢を示したのは、これが初めてではない。第一弾は、昨年10月にソウルで開かれた国際競技団体連合の総会の席上だった。「サッカーワールドカップのテレビ放映権契約などに関する交渉や決定は、ごく小人数が密室で行っている」と、演説。W2002杯招致を争っている当事国の責任者が、サッカー界の最高権力者に反旗を翻したのは、なぜか――。
その背景は、昨年8月に明らかにされたヨハンソン・欧州サッカー連盟(UEFA)会長による提言にある。「ビジョン1、2」と題された提言は
21人のFIFA理事のうち、8人を擁するUEFAのヨハンソン会長のこの提言は、1974年以来FIFA会長として世界のサッカー界に君臨するアベランジェ会長への“挑戦状”と受け止められた。
鄭会長は、この動きを見逃さなかった。昨年九月、韓国招致委員会は「2002W杯の収益金を全額寄付する。10%をFIFAに、残りは加盟各国に」と発表した。ヨハンソン会長の提言に即した内容だった。
鄭氏がアベランジェ会長に見切りを付けたのは、2002W大会招致に関する同会長の姿勢が一貫して日本寄りだからだ。
93年8月、U―17(17歳以下のユース)世界大会で来日したアベランジェ会長は「日本が最有力」と発言。昨年3月には、「韓国が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と共同開催できるなら最有力」と述べたが、南北共催実現の可能性は極めて低い。そして今年1月、「Jリーグの発展は目覚ましく、交通機関などの受け入れ態勢も良い」と、改めて日本に好意的な姿勢を示した。
アベランジェ会長が日本を支持する理由の一つは、FIFAと日本企業の深い関係にありそうだ。W杯の公式スポンサ11社のうち日本企業が富士フイルム、キヤノン、JVCと3社を数え、FIFAのマーケティングは、電通が出資しているISL社が手掛けているのだ。
こうした、日韓対決の中で、共同開催を模索する声が出始める。1998年の次期フランス大会からワールドカップ出場国は、32カ国に増える。当然、開催費用は膨大になり、開催国の負担は極限に達しているという。更に、今回の日韓の招致合戦の結果、屋根付き競技場・バーチャルスタジアム等のハイテク装置等、その投資経費はうなぎのぼりの状況である。
一国で、ワールドカップを招致できる国は、先進国に限られてしまう結果になる危険性があった。
さらに、2006年には、北欧4カ国による共同開催構想も具体化し、ヨーロッパ連盟のヨハンセン会長が、一歩先に共同開催の突破口を開いたといっても過言ではない。
アベランジェ会長とヨハンセン副会長の直接対決にはならなかったものの、ヨハンセン副会長の作戦勝ちといえる結果かもしれない。
W2002招致の切り札として、日本は、ハイテクを駆使した新しい大会運営を招致戦略の根幹に据えた。中でも切り札的存在が「バーチャルスタジアム」構想だ。
各地のスタジアム内に、横80メートル、高さ35メートルの巨大な半円形のスクリーンを設置。他会場での試合をリアルタイムの立体映像と音声で再現し、実際の試合観戦と同じような興奮と感動を提供する――というものである。
研究・開発費用は約500億円。2002年までには、特殊眼鏡なし立体画面が見られると言う。 32チームが参加するW2002杯本大会の総試合数は、合計で64試合。準決勝や、決勝が行われるメーン会場以外は、大会で使用されるのはわずかに3試合か4試合程度にすぎない。
「W杯開催期間の一か月を、日本全体の祭りにできないか。開幕戦や決勝戦の時に空いてしまう14会場を有効利用できる、現実性のある技術はないか」という発想が、バーチャルスタジアム構想の原点である。
確かに、施設を有効利用する方策としては、ユニークなものであり、ハイテク日本を世界にアピールし、韓国との誘致合戦の大きなプラスイメージになることは確実である。しかし、費用の問題(基本的には県が、税金から出費することになる)や、本当に臨場感あふれるシステムになるのかといった疑問も残る。
さらに、招致が決定したならば、このシステムの設置が開催施設に義務づけられるとするならば、我々県民の意志決定が拘束されてしまうことになるのだろうか?(招致のために、自動的にシステム設置を行わなくてはならないのか?)
ただただ、成り行きを注目していきたい。
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