◇再び発達した低気圧による大雨と強風
上旬は弱い冬型の気圧配置が続き、晴れる日が多くなりました。しかし、下層へ弱い寒気が入り、気温は平年よりやや低くなりました。中旬以降は日本の西に上層の気圧の谷が位置することが多く、日本付近の上層の大気の流れは南西流となたため、低気圧が頻繁に本州付近を通り、日本列島の南に前線が停滞することも多くありました。このため、南から暖かい空気が入りやすくなり、気温が高くなるとともに曇りや雨の日が多くなりました。この結果、月平均気温は8.4℃と平年より1.2℃高くなり、前月に引き続いて平年を上回りました。また、月降水量は156.5mmと平年の5倍になり、12月の降水量としては1968年の207.5mmに次いで多い記録になりました。一方、月日照時間は152.7時間と平年の80%しかなく、12月の日照時間としては少ない方から3番目の記録となりました。
12月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 8.4 7.2 月降水量(mm) 156.5 31.3 月日照時間(時間) 152.7 189.9
月降水量(mm) 順位 年 降水量 1 1968 207.5 2 2006 156.5 3 1958 147.8 4 1953 90.4 5 1959 87.6
月日照時間(時間) 順位 年 日照時間 1 1968 145.3 2 1953 151.7 3 2006 152.7 4 1993 153.0 5 1964 155.2 ※順位は、1953年から2006年の統計で、値の多い方または少ない方からの順位
●12月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移
今年は秋以降、気温が平年より高い状態が続いています。その年の秋以降に日最低気温が初めて0℃未満になった日(冬日初日)をみると、最も遅かったのは1958年の冬でした。この年は12月31日になっても日最低気温が0℃未満になった日がなく、0℃未満に下がったのは1959年の1月3日になってからでした。
今年の場合は、12月に入って一時的に気温が低くなりましたが、中旬以降は低気圧が次々と通過し、寒気の南下がなくて気温の高い日が続きました。このため、最低気温が0℃未満となる日がなかなか現れませんでした。しかし、月末に低気圧が発達しながら本州南岸を進んだ後、強い冬型の気圧配置となり寒気が南下してきて気温が低くなりました。この結果、12月30日に最低気温-0.1℃を記録して冬日初日となりました。この記録は、1957年の12月31日に次いで観測開始以来3番目に遅い記録でした。
●12月の日立市役所における日平均気温 |
※順位は日にちの遅い順。 ※1958年は、12月31日になっても |
25日から26日にかけて、上層の気圧の谷が深まりながら東シナ海から日本付近を東へ進みました。この気圧の谷の前面では南からの流れが強まり、暖かく湿った空気が北日本まで入り込みました。このため、25日の夜に九州地方の南で発生した低気圧が発達しながら本州南岸を北東へ進み、東日本から北日本にかけての太平洋側では総降水量が200mmを超える大雨となった所がありました。日立市でも26日の昼から27日の朝にかけて雨が降り続き、日立市役所では総降水量が135.0mmに達しました(市内6地点の降水量データ(htmlファイル)。また、26日の日立市役所における降水量98.0mmは、12月の1日の降水量としては観測開始以来最も多い記録となりました。
なお、低気圧の中心が関東地方の内陸部を通過したことと、関東地方を通過する時点ではまだ低気圧がそれほど発達していなかったことから、10月6日の低気圧ほどには風は強く吹きませんでした。26日の最大風速は、北北東の風7.5m/s、最大瞬間風速は北の風14.3m/sでした。
低気圧が三陸沿岸に進んで発達したため、27日の昼前から夜にかけて西よりの風が強まりました。日立市役所では、13時43分に最大瞬間風速23.6m/sの西の風を観測しました。また、低気圧が持ち込んだ暖気と西風によるフェーン現象の影響で気温が上昇し、13時43分には最高気温20.2℃を記録しました。これまでに、12月に入って最高気温が20℃を超えたことは6回あります。その時期は、上旬が5回、中旬が1回で、下旬になって20℃を超えたのは今回が初めてです。
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※北部消防署の26日12時から16時の降水量は、機器故障により欠測。 ※総降水量は、26日13時から27日08時までの値。 ※順位は、1953年から2006年の統計で、値の多い方からの順位。 |
●26日から27日にかけての気温と海面気圧及び降水量の時間変化(日立市役所)
●参考:12月26日の地上天気図と高層(500hPa面)天気図
2006年12月26日21時の地上天気図 | 2006年12月27日09時の地上天気図 |
大雨を降らせた低気圧が日本のはるか東へ遠ざかった後、28日から29日にかけて寒気を伴った上層の低気圧(寒冷渦)が、中国大陸東北部から日本海中部を経て、東北地方を通過しました。日立市では、上層の寒気の中心が通過した昼前頃から西の風が強まり、14時28分には最大瞬間風速29.7m/sの西の風を観測しました。寒気に伴う小さな低気圧が、日本の東へ抜けた18時過ぎ頃から、風はしだいに収まっていきました。
なお、この最大瞬間風速29.7m/sは、3月17日の発達した低気圧へ吹き込む西北西の風と並んで、2006年の最大値となっています。【市役所における12月26日から29日の10分間データ:テキストファイル各11KB(下のグラフの元データ) 12月26日、12月27日、12月28日、12月29日】
●26日から29日にかけての風向、風速の時間変化(日立市役所)
●参考:12月29日の地上天気図と高層(500hPa面)天気図
2006年12月29日09時の地上天気図 | 2006年12月29日09時の500hPa高層天気図 |
※高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の500hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。
気象衛星の水蒸気画像は、上層から中層の大気の流れを視覚的に表します。25日21時の画像では、中国大陸東岸に上層の気圧の谷に対応した渦が見られます。この渦は東へ進み、26日の21時には九州地方まで進んでいます。この渦の東側では、南から暖かく湿った空気が入り、雲が発達しています。
26日の21時には、気圧の谷前面の雲はさらに発達して、東日本から北日本にかけて円形状に広がるとともに、関東地方の南では雲に凹状の窪みが現れ、地上の低気圧が発達し始めていることを表しています。27日になると、雲の南側の窪みがくさび状に雲の中心に入り込み、しだいに渦を巻き始めて、低気圧の発達が最盛期に近づいていることを示しています。また、このとき上層の寒冷渦と地上低気圧の中心は、ほぼ一致しています。
28日になると、日本海中部に新たな上層の渦(寒冷渦)が南下してきました。この渦は、上層5500m付近で-36℃以下という寒気を持っており、日本付近では冬型の気圧配置が強まり、日本海側を中心に降雪量が多くなりました。また、強い寒気の影響で、29日の朝には北海道の西に下層の渦が発生し、南南東へ進みました。この下層渦は、29日の夜には関東地方の東へ進み、寒冷渦に吸収されました。下層渦が関東地方の東へ抜けた後、日立市では強風帯が地表付近まで下がってきて、一段と西の風が強まりました。
●参考:気象衛星水蒸気画像(25日21時から29日21時)
作成日:2007/01/16
訂補日:2013/06/04
名前 日立市天気相談所