2010年3月の観測記録

◇中旬を除いて曇りや雨の日が多く、気温の変動が大きくなる

　日本の南で高気圧が平年よりも強かったため、南から暖かく湿った空気が入りやすくなり、低気圧が本州付近を頻繁に通過しました。特に、上旬は本州南岸に前線が停滞し、その前線上を次々と低気圧が通り、曇りや雨の日が続きました。中旬に入ると移動性高気圧と低気圧が交互に通過するようになり、晴れる日が多くなりました。しかし、下旬に入ると再び前線や低気圧の影響を受けやすくなり、曇りや雨の日が多くなりました。このため、月の日照時間は147.5時間（平年比81％）と平年より少なくなりました。月間の風向頻度を平年の頻度と比べてみると、北から西の風向が平年よりも少なく、それに替わって北東の風向が平年の2倍以上ありました。これは、本州南岸に前線が停滞して、天気をぐずつかせる北東の風が吹きやすかったことを表しています。また、雨の降る日が多かったことから、月の降水量は114.0mmと平年の110％になりました。

　一方、月平均気温は5.5℃とほぼ平年並みでした。しかし、旬別の気温の推移を見ると気温の変動が大きい月でした。上旬の平均気温は平年並みでしたが、中旬は日本海を進む低気圧に向かってたびたび暖かい南風が入り、旬平均気温は8.7℃と平年より2.1℃高くなりました。下旬に入ると、逆に北から強い寒気が南下してきて旬平均気温は5.5℃と平年より2.5℃低くなりました。

3月の気象観測値
観測要素観測値平年値

月平均気温（℃） 6.5 6.8

月降水量（mm） 114.0 103.5

月日照時間（時間） 147.5 181.3

旬平均気温(℃)
旬観測値平年値

上旬 5.5 5.7

中旬 8.7 6.6

下旬 5.5 8.0

旬日照時間(時間)
旬観測値平年値

上旬 23.9 59.5

中旬 70.2 60.3

下旬 53.4 61.5

　●3月の日立市役所における風向頻度と日照時間の推移

　●3月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa面09時の気温の推移

　※上のグラフの元データ：エクセル2000ファイル（92KB）

　日別の気温の変化を見ると、変動はさらに大きくなっています。上旬の場合、旬平均気温は平年並みでしたが、5日には本州付近を北東へ進んだ低気圧に向かって南から暖かい空気が入り、最高気温は16.9℃まで上がりました。その後、9日から10日かけて強い寒気を伴った寒冷渦が日本海を東へ進んだため、7日かあ10日にかけて気温が低くなりました。特に9日は、本州南岸を進んだ低気圧に向かった下層へ冷たい空気が入ったため、昼過ぎから夜にかけて雪が降り、一時的に積雪が2cmになりました。また、9日の最高気温は3.8℃までしか上がりませんでした。

　中旬は、高気圧と低気圧が交互に通過して晴れる日が多く、気温も上がりました。特に、低気圧が日本海側を進んで南から暖かい空気が入った13日、16日、20日は最高気温が20℃近くまで上がり、5月中旬並みの陽気となりました。

　下旬に入ると本州南岸に前線が停滞するようになり、曇りや雨の日が多くなって気温も低くなりました。さらに、28日から30日にかけては500hPa面における中心付近の気温が-42℃以下という非常に強い寒気が、北海道から東北地方を通過して関東地方の東へ進みました。このため、28日から30日にかけては一段と気温が低くなり、日立市役所では日平均気温が2.9から3.0℃と真冬並の寒さとなりました。30日の夜になると寒気は東へ離れていき、31日には平年並みの気温に戻ってきました。

　去年（2009年）の3月も気温の変動が大きく、気温の推移も今年とほとんど同じでした。上旬は寒気が入り、3日には雪が降って一時的に積雪しました。中旬には日本海を進む低気圧に向かって暖気が入り、19日には日最高気温21.6℃を記録しました。そして、下旬になるとシベリアから南下してきた寒冷渦が沿海州付近に停滞するようになり、日平均気温が5℃前後の寒い日が続きました。例年、3月、4月は気温の変動が大きい時期ですが、今年と去年は下旬に強い寒気が入り同じように寒くなりました。

　●参考：3月9日21時の地上天気図と500hPa及び850hPa面高層天気図