2000/10/23update

第3回公明党全国大会 重点政策(案)
21世紀「健康日本」の構築 ―― “活力と安心の生活大国”をめざして ――


第2部

一 中小企業の振興、新産業育成に全力を挙げます

 連立内閣の成立以来、経済再生に向けた景気対策への積極的な取り組みなどにより、わが国経済はようやく回復へと向かいつつあります。景気回復を確実なものとすると同時に、雇用の確保に万全な体制を整えつつ、経済・産業構造の改革を断行し、日本経済の新生に向けて全力で取り組みます。特に「中小企業が主役」となるような支援策の強化、新産業の育成、新社会資本の整備・拡充などを積極的に進めます。

1 経済・産業の再生

(1)21世紀をリードする産業再生

 21世紀を迎えるにあたって、情報通信、バイオテクノロジー、環境、医療・福祉・介護、教育、金融等は、高い成長が期待されるとともに、今後人材の流動化が進んでいくなかで、質の高い雇用機会の創出が期待される重要な戦略分野であります。そのために、これらの成長産業分野に対し、思い切った公的低利融資や債務保証、投資減税等を集中期間を設けて実施するとともに、大胆な規制緩和を断行します。さらに、産業の再生や新産業創出のカギを握る科学技術の振興、21世紀未来都市への基盤整備をはじめ、新社会資本整備に重点投資を行います。

(2)IT革命による戦略的経済構造改革の断行

<1>通信料金を米国並みに引き下げ
 インターネット関連の通信料金について市場の競争を促進し、米国並みの低廉・定額料金への引き下げをはかります。また、電気通信事業第一種、第二種免許区分の廃止を含めた見直しなど、規制撤廃・緩和等を一層促進します。

<2>光ファイバー網等の基盤整備の推進
 高度情報化社会を構築するために、情報通信分野の基盤整備を積極的に進めます。特に、インフラとして重要な光ファイバー網の敷設事業等に対し、利子補給や公的融資を大幅に拡充するなど積極的な支援を進めます。特に、デジタル・デバイドを克服し、すべての国民がIT革命の利便性を享受できるように、学校、社会保障施設等への光ファイバー網等の敷設(FTTS、FTTC)については、民間活力と併せて、公共事業扱いとすることを積極的に支援します。

<3>電子商取引環境の整備拡充
 2003年には70兆円を超すとも見込まれるインターネット利用の電子商取引について、公正な競争を確保し、安心して取引できる制度の創設・拡充等、環境整備を積極的に進めます。特に、プライバシーの保護、決済手段の充実、不正取引の防止や有害コンテンツの排除、流通分野の規制撤廃・緩和、知的財産権保護等の環境整備を早急にはかります。

<4>通信・放送分野におけるデジタル化の推進
 デジタル化の進展は、通信、放送、映像、情報内容、情報処理機器等のさまざまな異業種を融合させつつ、経済社会を発展させるための決め手です。近い将来の放送と通信等の業種の融合を視野に入れつつ、デジタル化推進を積極的に支援します。

<5>経済への波及効果大きい電子政府・電子自治体の早期実現
 電子政府・電子自治体の早期実現は、産業の振興に大きな波及効果をもたらします。
 行政と暮らしの間で電子手続きが可能になれば、例えば、住民票や免許証、印鑑証明等、情報公開などの手続きが24時間いつでも可能になります。さらに、同じ自治体のなかからだけでなく広域的にネットで結ばれ、旅先からや遠隔にある本籍地などへも必要なときに速やかに手続きできるようになれば、生活の便利さは飛躍的に増大します。
 また、公共事業の入札や物品購入のオークションなどが電子申請によって行われれば、行政とビジネスとの間の電子商取引の基盤が成立することになり、このこと自体、民民の取引の基盤づくりを促します。このため、経済振興の観点からも、電子政府・電子自治体の早期実現を積極的に推進します。

(3)総合的な中小・ベンチャー対策の推進

<1>IT革命への対応
 中小企業がIT革命の利便性を享受できるようにするために、中小企業等を対象としたITセミナーや研修の開催を支援するとともに、経営戦略の立案やそれらを実行するシステム構築・導入をサポートするITコーディネーターの育成、中小企業の依頼に対してきめ細かな対応をはかるIT推進アドバイザーの育成などを進めます。

<2>ベンチャー・サポート・アドバイザーの拡充
 ベンチャー企業の経営・技術問題等に関し、相談、指導を受けることができる専門知識を有する「ベンチャー・サポート・アドバイザー」制度を拡充し、中小・ベンチャー企業の創業と経営の安定を支援します。

<3>安定した資金調達制度の確立
1)中小企業、零細企業の資金調達を円滑にするため、「地域金融活性化法」(仮称)を制定します。
2) ベンチャー企業経営の隘路である資金の安定した調達に資するため、万全の体制を確保します。また、知的財産権や売掛債権の担保評価の実現をはかります。
3) 未公開株式の公開規制の緩和や私募債による社債発行のための信用保証協会の保証を行います。
4) 中小企業事業団による投資事業有限責任組合への大幅な出資の増額を行います。
5) 中小・ベンチャー企業への投資で損失を蒙ったベンチャーキャピタルやエンジェル(個人投資家)に対する課税繰り延べ期間を延長します。

<4>中小・零細企業の経営安定化対策
 中小・零細企業は、その零細性の故に、資金調達力の弱さなど社会・経済上の不利を蒙ることが多いのが実情です。
 中小零細企業の経営基盤強化のため、事業の共同化の推進や中小企業振興事業に対する支援などによる適正な競争環境の整備をはかるとともに、下請企業いじめの排除策を講じます。また、政府系金融機関による融資や債務保証の充実、官公需の発注量の拡大、中小企業倒産防止共済制度の拡充等を進めます。さらに、中小企業の技術やノウハウを評価する体制整備を進めます。

<5>事業承継税制の拡充
 中小企業の円滑な事業承継をはかるため、相続税・贈与税における前納制度及び生前贈与制度等の拡充を推進するとともに、取引相場のない株式評価のあり方について検討します。

<6>中小企業における産学連携の推進
国立大学等における技術成果の中小企業への還元や中小企業の技術に対する評価及び指導の充実をはかるなど、中小企業における産学連携を一層推進します。

(4)金融再生

<1>不良債権処理の一層の促進
 経済活動の基幹部門である金融再生のため、情報開示の一層の促進や金融検査体制の強化をはかり、不良債権の正確な実態を明らかにし、早期処理を進めます。

<2>早急な金融再編
 金融の自由化を進め、活力ある市場を形成するため、従来の横並び体質を排し、金融機関の大胆な再編・統廃合を促します。

(5)第4次産業の確立と育成

 環境保全や高齢者福祉などの分野を循環型社会や高齢社会における経済発展の原動力「第4次産業」と位置づけ、盤石な経済産業基盤を構築します。そのために、民間主導の施設や機能体制を整備し、市場原理が働くことで給付サービスの向上と負担(コスト)の軽減をはかる仕組みを確立します。また、NPOの参入を含め「第4次産業」の発展による雇用の確保と拡大をはかるとともに、地方の労働市場活性化の施策を積極的に進めます。

2 安心とゆとりある生活を実現する雇用政策の確立

 雇用の安定・確保は、社会の安定の基礎となるものです。しかし、わが国の雇用情勢は極めて厳しい環境下にあります。当面する雇用の確保は、適切な経済運営で景気の回復をはかり、種々の雇用政策を出動することによって対応する必要があります。同時に、将来の雇用の安定・確保には、規制緩和の計画的な実施により経済構造改革を進め、成長が見込まれる産業を育成することによって、新たな雇用を創出することが不可欠です。また、これらの変化に対する雇用のセイフティーネットの整備が必要です。

(1)新産業・雇用創出への総合的取り組み

<1>「経済新生戦略本部」の設置
 新産業・雇用創出に関する計画を政府の総合政策として策定するとともに、これを推進するため政府に「経済新生戦略本部」を設置します。

<2>新産業育成による雇用の創出
 国民生活の向上、市場規模の拡大が見込める分野を規制緩和と重点投資で育成し、雇用の創出をはかります。具体的には、情報通信、バイオテクノロジー、環境、金融、医療・介護・福祉分野、教育などの分野を育成します。

<3>NPO・ベンチャー企業による雇用創出
 NPOに対する税制上の優遇措置の拡大、NPO・ボランティアの紹介やあっ旋のための情報ネットワーク創設などにより、雇用の創出をはかります。また、勤労者のボランティア休暇制度の導入を推進します。
 ベンチャー企業の資金調達制度や賃金助成制度の拡充をはかります。

(2)職業能力開発と能力評価システムの確立

<1>コミュニティーカレッジの創設など職業能力開発体制の確立
1)自主的な職業能力開発の機会を拡充します。そのために、公共職業訓練機関や民間教育訓練機関の情報を一元化し、勤労者に広く情報を提供できるネットワークを整備します。
2)成長産業への円滑な人材シフトをはかるため、専修学校や私立大学など、民間教育訓練機関と連動した委託訓練制度を大幅に拡充します。
3)産業界や行政・公的機関が一体となった社会的能力開発システムとして、公立大学の活用や公的職業訓練機関の機能拡充によってコミュニティーカレッジを創設します。そのコミュニティーカレッジや民間教育訓練機関などの相互の交流が可能となる総合的職業訓練のネットワーク化をはかります。
4)離転職者の職業訓練教育をサポートするためにカウンセリング機能の強化や教育訓練給付制度の充実をはかり、対象範囲や給付額を拡大します。

<2>職業能力評価システムの整備
 労働市場の流動化の進展に対応し、求人と求職をスピーディーかつ的確にマッチングさせることができるようにするため、勤労者の職業能力を適正、客観的に評価するシステムを確立します。

<3>職業紹介システムの強化・拡充
1)公共職業紹介の機能強化をはかるとともに、ハイテク化による官民の職業紹介を一体化させた職業紹介システムの推進します。
2)民間職業紹介や人材派遣の活性化をはかります。

(3)雇用保険制度の見直し
 雇用調整金助成金など三事業の整理統廃合によって、雇用の確保や雇用の流動化に対応するため雇用保険制度の見直しを行います。

(4)個別紛争処理システムの確立と年齢による雇用差別の禁止
 個別的な紛争を解消するために必要な整備を行い、個別紛争処理機関の設置を推進します。また、募集・採用などの年齢による雇用差別を禁止するために必要な法的整備をはかります。

(5)仕事と子育ての両立支援
<1> 育児休業や介護休業の取得がとりやすく、職場への復帰がしやすい環境整備を推進します。
<2> 育児や介護のための短時間勤務制度を導入します。
<3> 子どもの看護休暇制度を導入します。
<4> 介護期間中の社会保険料の免除を実現します。

(6)高齢者が参加できる活力のある社会

<1> 雇用継続制度の充実やシルバー人材センターの拡充をはじめ高齢者の知識や経験を生かした就業機会を整備します。
<2> エージフリー社会の実現
 年齢にかかわりなく働くことができるエージフリー社会の実現に向けた取り組みを推進します。

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