第2部
二 安心で快適、豊かな住環境の都市づくりを進めます
現代の都市は人・物・情報の過度の集中により、都市住民は慢性的な交通渋滞、長時間の通勤ラッシュ、狭小な住宅環境、ゴミ・環境問題、防災対策を強いられ、その居住環境は快適と呼ぶには程遠いものとなっています。また都市中心部の夜間の人口減少に加え、少子・高齢社会の到来に伴い、商店街は活気を失い、昔ながらの心の通ったぬくもりのある地域社会は急速に少なくなっています。
私たちは、今こそ、都市住民が直面しているこれらの諸課題を解決することのできる新たな都市政策を提案、実行することにより、快適で活力のある都市生活を再生し、人と人との心の絆、ゆとりある生活を新たにつくりなおすことをめざします
1 「快適・安心・環境にやさしい」まちづくり
(1)「快適」で活気のあるまちづくり
<1>バリアフリーの推進
高齢社会に対応するために、まち全体を通したきめ細かなバリアフリー化を推進し、人の心のバリアも取り除きます。例えば、全国各都道府県にバリアフリー・モデル事業駅を指定し、駅舎(駅前広場を含む)や駅周辺地域のバリアフリー化の推進、公営住宅や公衆トイレなどへのエレベーター、スロープの設置を目に見える形で大胆に進めます。また電線の地中化や幅の広い歩道整備、車道の段差解消や各種文字標識を分かりやすくグラフィック化するなど、子どもや高齢者、身体の不自由な人や外国人観光客にも配慮した、すべての人にやさしいまちづくりを推進します。
<2>ぬくもりのあるコミュニティーの再生
都市の人口減少を防ぎ、活気のあるまちづくりを行うために、住宅、商業、文化、教育、福祉、交流などを集積し、歩ける範囲で生活ができるまちづくり(ミックスドユース)を推進します。
例えば、雨にぬれずに通勤できる駅直結住宅や、公営住宅などに介護・子育て支援施設、保育園などの併設を推進します。
また都心部の低未利用地を有効・高度利用し、職住接近型の良質な住宅の供給と活気ある商店街の再生によって、ぬくもりのあるまちづくりを促進します。
(2)災害に強い「安心」のまちづくり
政治・経済機能が集中する大都市の防災力を高めることは、「安心」して都市に暮らすための喫緊の課題です。
まず、木造密集市街地などにおける老朽建築物の建替え・電線類の地中化を進め、防災空間を確保をします。同時に、建物・ライフラインの耐震性・不燃化を強化するとともに、水害対策としての河川の整備を進めます。
一方、GISを活用した防災情報の整備、特にハザードマップのデジタル化を推進することにより、住民に分かりやすい防災マップを作成するとともに、的確な災害情報をスピーディーに伝達できるように整備します。
そして自衛手段として、すでに神戸市で実施している「防災福祉コミュニティー」を小学校区単位に結成し、自治・婦人会・老人会・消防団・防犯等の組織を集結することにより、地域の防災力を高めます。
また、自然災害で被災した住民の生活再建支援のため、被災者生活再建支援法などの関連法案・制度の整備を進めます。
(3)「環境にやさしい」まちづくり
<1>循環型社会の構築に向けたまちづくり
地球環境の保全に向けた都市整備、資源の有効活用をはかるため、循環型社会の構築を推進します。環境、省エネルギーに配慮したごみ焼却、発電施設の建設や、リサイクル、リユース施設などの新しい機能と統合して一括配置するなど、効率的でコンパクトな基盤整備事業を展開します。また各家庭での生ごみの堆肥化など、身近なところで環境保全がはかられるごみリサイクルシステムを構築します。
<2>ヒートアイランド対策
都市部のヒートアイランド解消のため、ビルやマンションなどの屋上庭園による緑化、道路における植樹帯の設置、雑木林の保全など、都市における緑化空間の整備・促進をはかります。併せて児童公園・地域公園・緑地・大公園といった体系的な都市公園整備をはかるとともに、動植物など生態系に配慮した自然との共生をめざすエコロジカルなグリーンウェイ構想の推進や、緑豊かで水辺が効果的に利用できるやさしい空間を活かしたまちづくりを推進します。
2 「快適・安心・環境にやさしい」都市交通整備
(1)交通渋滞の解消で「快適」な都市交通
都市における慢性的な交通渋滞を解消するために、
ア)マイカーを駅の近くに駐車して鉄道に乗り換えることで都心への車の乗り入れを抑制するパーク・アンド・ライド方式や中心市街地の道路から一般の自動車交通を排除し、バスなど公共交通機関のみを運行させるトランジットモール方式の推進
イ)高度道路交通システム(ITS)の活用によるロードプライシング制度(交通需要の調整のための料金システム)の導入
ウ)都市交通の大きな渋滞原因となっている踏切の立体交差化
エ)都市鉄道・地下鉄網の重点的整備
を推進します。また、積雪地域の交通の安全を確保するためにロードヒーティング(道路消融雪設備)を推進します。
(2)交通のバリアフリー化で「安心」の都市交通
高齢社会に対応するため、昇降が容易な低床バスの拡充や福祉タクシーの普及推進、改札の通過に便利なIT乗車カードの普及など、高齢者や障害者にきめ細かに配慮された交通システムを整備し、誰もが安心して行動できるまちをつくります。
(3)自動車交通のグリーン化で「環境にやさしい」都市交通
COP3で定められた温室効果ガス(CO2等)の削減目標を達成し、自動車から排出される窒素酸化物(NOX)・粒子状物質(PM)を削減するため、DPF(ディーゼル排気微粒子除去フィルター)の普及や低公害車の開発など、自動車交通自体を環境への負荷の少ない交通体系に転換します。
3 「快適・安心・環境にやさしい」住環境整備
(1)年収の2倍で取得できる住宅の実現
定期借地権等の活用と建築コストの低減や市街化区内農地、工場跡地の計画的な宅地化などの諸施策を推進し、大都市でも百平方メートル程度の分譲マンションが年収のおおむね2倍で取得できる住宅政策を推進します。また、中水道、ソーラーなど環境に配慮した長寿住宅(百年住宅)を推進します。
(2)「公営住宅ルネッサンス21」の推進
<1>すべての公営住宅等をケア住宅化
すべての公営住宅に緊急通報システム装置の設置や生活援助員の配置及びバリアフリー化(エレベーター、手すり等の設置)を進めます。また昭和30〜40年代に建築された老朽公営住宅の建て替えを積極的に推進し、介護・子育て支援施設、保育園、備蓄倉庫などを併設し、若年世帯も共に生活できるよう改善をはかります。また、このような施設を併設した場合には、容積率を緩和するなどの施策の実施、促進をはかります。
<2>スーパーリフォームの推進による居住空間の充実
低コストで建替えと同様の効果が得られるスーパーリフォーム(構造体を補強し、内装・設備・配管・配線を全面リフォームする)事業を計画的に推進します。また、一戸あたりの面積も拡大します。
<3>木賃アパートの建て替えによる公営住宅の拡大
老朽化した木造アパートなどの密集している地域には、それらの土地を借り上げるなどの方法で木賃アパートの公営住宅への建て替えを推進します。初期の計画の段階から住宅金融公庫の融資ができる「都市居住再生融資制度」を的確に利用し、民間による木賃アパートの建替えに対して全面的な支援を行います。また従前居住者の安定を確保するため、一戸でも借り上げて公営住宅化するなど、多様な方法で居住環境を改善します。
(3)安心・快適なマンションライフの実現
<1>管理充実のための法制化
マンションの管理・維持に関する相談の行政窓口を整備し、マンション問題アドバイザーの育成や修繕積立金等の住宅金融公庫の受け入れ、マンション履歴情報登録制度の創設、マンション管理業の適正化等を推進し、マンション管理組合への支援を強化します。同時にマンション管理組合の管理能力を高めるため、「マンション管理士資格制度」を創設します。
<2>「マンション建替え促進法」の制定
老朽化マンション建替えの促進を支援する「マンション建替え促進法」の制定や、マンションの長寿命化技術開発を強力に推進します。
<3>定期借地権マンションの推進
定期借地権の分譲・賃貸マンションの供給を促進します。
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