第2部
五 男女がともに個性と能力を発揮できる共同参画社会を実現します
平成11年6月に公布、施行された「男女共同参画社会基本法」は、その前文で「男女が互いにその人格を尊重しつつ責任も分かち合い、性別に関わりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は緊急の課題」とし、「この実現を21世紀のわが国社会を決定する最重要課題」と位置づけています。しかし、現状を見るとその実現はまだ途上と言わざるを得ません。
男女共同参画社会の形成は基本的人権に深く関わる問題であるとともに、つねに状況の変化に対応した適切な対応が求められます。そのため公明党は、本格的な男女共同参画社会の実現に継続して取り組みます。
1 男女共同参画社会実現へ具体的施策を推進
(1)ポジティブアクション(積極的差別改善処置)を含む実効性ある行動計画の策定
先に成立した男女共同参画社会基本法の精神に基づき、国・地方自治体・民間企業等々が、女性の積極的な採用や昇進を進める具体的な行動計画を策定するよう推進します。
国連経済社会理事会では2000年までに男女共同参画を達成するため、「1995年までに指導的地位に就く女性の割合を少なくとも30パーセントまで増やすこと」を目標にしています(1990年採択)。また、1995年採択の北京行動綱領も、政策決定への女性の参画を重要テーマとしています。
わが国は大きく後れをとっているのが現状ですが、特に公務員・審議会メンバー・議員等々の女性の参画目標30パーセントは早急に達成し、将来50パーセントをめざします。
(2)社会通念・慣行の是正と広報活動の推進
あらゆる分野への女性の社会参加が進みつつありますが、社会通念や習慣、しきたりのなかにいまだに根強く男女の固定的役割分担意識が残っています。
社会的、文化的、歴史的に形成された性別(ジェンダー)にとらわれることなく、自らの選択によって個性・能力を十分に発揮しながら社会のさまざまな分野で活躍し、いきいきと充実した生活を送れるようにします。そのために男女共同参画社会についての啓発、広報活動や学校教育を推進し、ジェンダーフリーの考え方を幅広く定着させるとともに、苦情処理システムを確立します。
(3)年金制度の見直し
年金制度については、個人単位の制度設計を検討するなかで、離婚の際の夫婦間の公平性や女性の年金権の確保を図ります。
(4)選択的夫婦別姓制度などの法整備
個人の選択に対する中立性の観点から民法を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入します。また離婚に伴う財産分与は2分の1を基本とし、離婚後の子どもの養育費支払確保の制度を確立するなど、家族法の見直しを行います。
(5)リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)
これまで長い間、人口政策は食糧問題や安全保障の観点から政府によって決定されてきました。しかし、子どもをいつ、何人産むかを自己決定し、健康を享受するのは女性の権利であるという「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」の考え方が、1994年にカイロで開催された「国際人口開発会議」以来定着してきています。
また、避妊や性教育を充実し、妊娠・出産をする可能性がある女性の生涯を通した健康支援を推進するとともに、妊産婦の健康診断や出産手当などの公的支援を拡充します。さらに不妊に悩む人への精神的、経済的支援を推進します。
2 「女性に対する暴力防止法」の制定
性犯罪、セクシャルハラスメント、夫やパートナーなどからの暴力等々、女性への暴力はいかなる形態であれ女性の人権を侵害するものであり、許されるものではありません。「女性に対する暴力防止法」を制定し、暴力根絶に取り組みます。
また女性の人権尊重や、暴力は犯罪であることの教育・学習をはかるなど意識啓発に努めます。
シェルターの整備拡充やそれに対する公的財政支援、人権センターの創設をはかり、暴力を受けた女性に対する相談、カウンセリングなどのケアの充実をはかります。
3 労働環境の整備と子育て支援
(1)育児・介護休業制度、保育の拡充
介護休業・育児休業期間の延長、所得補償のさらなる拡充、保育園の待機児童ゼロの実現など、女性が仕事と家庭を両立できる環境整備を積極的に進めます。
(2)再雇用制度の普及および援助
わが国の社会には、高い教育を受けた女性が、職業人としてその能力を十分に発揮できない状況が数多くあります。これは社会にとって損失以外の何物でもありません。特に、結婚、出産、育児、介護などで一時退職した女性が再就職を希望するときなどは、現職への復帰、あるいは前職で培われた経験・能力を活かせるよう、女子再雇用制度の普及を促進します。なお、再雇用の準備に当たって技術取得や教育訓練等を必要とする場合は、これを支援します。
(3)男女差別の撤廃
男女雇用機会均等法の改正により、雇用における採用・配置・昇進において男女差別が法的に禁止されましたが、「制度上の平等」は保障されていても「事実上の平等」とは格差があるのが現状です。扶養手当や住居手当等も世帯主でない女性には認められていないなどの「間接差別」も根強く残っています。同一価値労働同一賃金制の確立をはじめ労働における男女差別の撤廃をめざします。
また、女性が幅広い分野で能力を発揮できるよう女性のエンパワーメント(力を向上させる)のための教育・学習機会の充実をはかります。
(4)女性の起業家支援
女性が生活者としての視点や発想で新たな事業やサービスを提供することが社会のニーズと合致し、ベンチャービジネスとして成功する例が増えてきました。しかしわが国では女性の起業への意欲は高いものの、資金調達やマネージメント専門技術の不足、情報・データ不足等々で困難に直面しているケースが多いのが実情です。
女性企業家や起業を希望する女性に対し、起業、専門経営に役立つ実践的な講習や総合的な情報提供を行うとともに、公的融資並びに融資の特別保証枠を拡充し、創業支援を行います。
(5)農林水産業におけるパートナーシップの確立
農林水産における女性の経営参画など、地域の生産・生活に関するあらゆる方針決定の場への参画を推進するとともに、農林水産技術や経営のノウハウの研鑚、女性のネットワーク化などを通じて、女性が男性の対等なパートナーとして積極的に参画できる農山漁村にします。
(6)労働時間差別の撤廃および長時間労働の見直し
パートタイム労働や派遣労働などの就業条件を整備するとともに、パートタイム労働者と通常の労働者との処遇・労働条件の均衡確保のための施策を推進します。また、仕事と生活のバランスのとれた社会の構築のため、男女の長時間労働の見直しなど、雇用体系の改善をはかります。
(7)一人親家庭の支援
シングルマザーや一人親家庭の仕事と家庭の両立を社会で支援するシステムを強化します。また障害児を持つ家庭の支援も強化します。
4 国際協力と国内対応の推進
(1)途上国の女性支援(WID)を強化
人口爆発、環境破壊が進み、南北格差が拡大しつつあります。先進国がこれまで行ってきた経済開発偏重型のODAは必ずしも十分な効果を上げているとはいえません。教育や保健衛生、草の根の女性の生活や地位向上につながる民生部門のODAやNGO支援を拡大します。そしてわが国の支援が女性のエンパワーメントにどのように役立っているのか、を調査する新たな機関を設けます。
99年6月に行われたケルン・サミットにおいて、21世紀を迎えるに当たり、重債務貧困国の債務を帳消しにする合意がなされましたが、その債務返済相当額の使途についても厳しくチェックします。
(2)北東アジアの女性ネットワークの推進
世界の平和確立に貢献するとともに女性の地位向上に資するため、北東アジアの女性ネットワークを推進し、女性フォーラムを開催します。
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