Copyright Yoshihiro IDE  LastUpdate 2002.Apr.11

要介護認定者の所得税障害者控除
<新潟と愛知県内の一部市町村が「障害者控除認定書」を要介護認定者に送付>

 所得税法や地方税法では、申告する本人または扶養親族が障害者(または特別障害者)に該当する場合、『障害者控除』として一定金額を所得から控除することがでる制度があります。

 新潟と愛知県内の一部市町村では、要介護1〜5の認定を受けている人等(障害者手帳等の交付を受けている人は除く)について、「障害者控除」を受けるための「障害者控除対象者認定書」を郵送で交付しました。

 一般には、介護保険の要介護認定者であっても、税法上の障害者(特別障害者)とは認められません。

 被保険者の負担を少しでも軽くしようとする取り組みとして評価することはできますが、税の公平性という観点から見ると大きな矛盾があると思われます。

井手県議の調査で「障害者控除対象者認定書」を郵送で交付したことが確認された市町村(2002/4/10現在)
新潟県上越市要介護1,2に障害者控除
要介護3〜5に特別障害者控除
障害者手帳等を持っている人には郵送せず
長岡市
小国町
愛知県犬山市要介護1〜3に障害者控除
要介護4,5に特別障害者控除
障害者手帳等を持っている人にも郵送し、
控除額が多い方を使用することを認めている
江南市
稲沢市
岩倉市
刈谷市

 納税者自身又は控除対象配偶者や扶養親族が所得税法上の障害者にあてはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを障害者控除といいます。
 控除できる金額は障害者1人について27万円です。また、特別障害者に該当する場合は40万円になります。
 さらに、所得税の控除が確定すれば住民税(個人県民税と個人市町村民税)についても、無条件で障害者控除(特別障害者控除)が受けられることになり、その額は障害者控除が26万円、特別障害者控除が30万円です。
 所得税の控除に申請は、確定申告期間ではなくても税務署で受け付けられますし、サラリーマンの場合は、年末調整の用紙に記入することで簡単に受けることができます。
 <障害者控除の詳細をレポートしました>

 障害者控除の対象となる人は、一般的には、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人や身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人です。
 さらに「精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が前記の人に準ずるものとして町村長や福祉事務所長の認定を受けている人」も、障害者控除を受けることができるとされています。(所得税法施行例:昭和40年政令第96号)
 つまり、障害者手帳などを持っていなくても、市町村長が認定すれば障害者控除を受けられることになります。

 新潟県の長岡市と上越市、小国町では、2002年2月、介護保険の要介護度1と2の人に関しては「障害者」として、要介護度3〜5の人は「特別障害者」として認定する「障害者控除対象認定書」を発行して、要介護認定者に郵送しました。
 要介護度とは、仮にその人が施設に入所したらどのくらい介護の時間が必要か推計した要介護認定基準時間推計によって決められています。したがって、障害の度合いを示す物差しではなく、介護にかかる時間の物差しです。そこに、要介護度を一律、障害者控除の基準に使うことへの疑問が残ります。

 一方、愛知県内の犬山市、江南市、稲沢市、岩倉市、刈谷市などは、3月に、介護保険の要介護度1〜3の人に関して「障害者」、要介護度4と5の人は「特別障害者」として認定する「障害者控除対象認定書」を郵送しました。

 要介護度3の取り扱いが、新潟内市町では「特別障害者」、愛知県内市では「障害者」と分かれてことには、大きな疑問が残ります。
 さらに、新潟県内市町は、障害者手帳を持っている人に対しては「障害者控除対象認定書」を発行していませんが、愛知県内市は発行しています。その上、愛知県内市は、障害者手帳と認定書の区分が違う時は、控除額の多い方を使うことを認めています。この解釈にも議論の余地が残ります。

 茨城県内の自治体並びに茨城県介護保険室に、井手県議が確認した中では、このような対応をしている自治体は茨城県には一つもありません。
 厚生労働省に見解を問い合わせていますが、2002年3月11日現在では、回答が出されておりません。
 自治体の対応によって、税金の還付を受けられる人とそうでない人がでることには問題があると思います。
 長岡市役所介護保険課渡辺課長に、電話で経緯を問い合わせたところ、「何度も新潟県に見解を尋ねたが回答がなかった。介護保険の保険者は市町村であり、税法上も市町村長が認めれば障害者控除が受けられるとされているので、市独自の判断で要介護認定者全員に「障害者控除対象認定書」を送付しました」と答えていただきました。
 この問題ついての議論の深化と、全国市町村の対応の統一が一刻も早く求められます。

参考:障害者控除とは
参考:長岡市のHP
参考:長岡市が要介護認定者に送付した書面
参考:刈谷市が要介護認定者に送付した書面


長岡市が要介護認定者に送付した書面
(クリックすると拡大します)


刈谷市が要介護認定者に送付した書面
(クリックすると拡大します)


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