◇2週続けて、台風が関東地方を通過
日本付近は、亜熱帯高気圧が平年よりも北に位置し、東シナ海付近が上層の気圧の谷になることが多く、上層の西南西の流れが顕著でした。このため、南からの湿った空気が入りやすく、雨の降る日が多くなりました。特に、上旬から中旬にかけては、本州南岸に前線が停滞することが多く、曇りで雨の降る日が多くなりました。また、9日には台風第22号が伊豆半島付近に、20日には台風第23号が四国地方に上陸し、各地で大雨が降りました。日立市役所においても、10月の降水量が478.0mmと平年の300%になり、1991年の475.0mmを抜いて観測開始以来最も多くなりました。また、日照時間も122.4時間と平年の80%しかありませんでした。一方、月平均気温は16.1℃と、ほぼ平年並みでした。
10月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 16.1 16.6 月降水量(mm) 478.0 159.2 月日照時間(時間) 122.4 152.5 月日照率(%) 0.35 0.44
10月の降水量 順位 年 降水量 1 2004 478.0 2 1991 475.0 3 2001 356.0 4 1979 339.0 5 1961 306.1 平年 - 159.2
10月の日最大降水量 順位 年 日 降水量 気象要因 1 1999 27 182.0 南岸低気圧 2 1981 22 174.0 台風第24号 3 2004 9 162.0 暖湿流と台風第22号 4 2001 10 155.5 南岸低気圧 5 1976 9 154.0 南岸低気圧 6 2004 20 132.0 秋雨前線と台風第23号 ※降水量の単位はmm、順位は降水量の多い方からで、1953年から2004年の統計
●10月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移
●10月の日立市役所における日照時間の推移と北半球500hPa高度・偏差図
※高度、偏差図において、実線は等高度線を、点線は偏差(平年の高度との差)を表しています。また、網掛けの部分は負偏差(平年より高度が低い)の領域を表しています。
10月に台風が2個上陸したのは、気象庁が1951年に統計を開始して以来、1955年に次いで2回目です。また、関東地方を10月に台風が2個通過したのは、初めてのことです。台風第22号は、4日にフィリピンの東海上で発生し、8日には南大東島の南で中心気圧920hPaの非常に強い台風に発達しました。その後、台風は日本の南海上を北北東へ進み、9日16時頃に伊豆半島へ上陸し、神奈川県から千葉県を北東へ進み、20時頃には茨城県の東海上へ抜けました。一方、台風第23号は、13日にグアム島の北西の海上で発生し、16日には中心気圧940hPaの強い台風に発達しました。その後、台風は沖縄本島から奄美諸島沿いに北北東へ進み、20日13時頃に高知県土佐清水市付近に上陸し、近畿地方から中部地方、関東地方を横断して、21日3時には銚子の東へ進みました。
台風第22号は、伊豆半島に近づいた9日15時においても、中心気圧940hPa、最大風速45m/sと強い勢力を保っていましたが、強風半径が410kmと小さい台風でした。このため、台風が千葉県を通過したにもかかわらず、日立市役所では海面気圧は997.1hPaまでしか下がりませんでした。風も、台風の北側の高気圧との気圧傾度による北東の風の影響が大きく、台風がまだ奄美諸島の東にある8日の夜から、平均風速5m/sを超える北東の風が吹き始めました。
台風第23号は、四国地方に近づいた20日12時において、中心気圧950hPa、最大風速40m/s、強風半径800kmと、非常に大きな台風でした。しかし、近畿地方から中部地方を東へ進んだため、急速に勢力が衰えました。また、関東地方に進んでくる頃には、上層渦と下層渦が分離し、雨雲を含む上層渦は先に北東へ進みました。日立市役所における海面気圧も991.1hPaまでしか下がりませんでした。
●気象観測記録(10月9日:台風第22号)
降水量(mm) 最大風速(m/s) 最大瞬間風速(m/s) 海面気圧(hPa) 総降水量 1時間最大
降水量同時刻 風速 同風向 同時刻 風速 同風向 同時刻 最低気圧 同時刻 184.0 24.5 19:50 13.8 北北東 19:53 27.7 北 20:35 997.1 19:52 ※総降水量は、8日14時から9日の21時までの降水量。
●気象観測記録(10月20日:台風第23号)
降水量(mm) 最大風速(m/s) 最大瞬間風速(m/s) 海面気圧(hPa) 総降水量 1時間最大
降水量同時刻 風速 同風向 同時刻 風速 同風向 同時刻 最低気圧 同時刻 150.0 35.0 23:48 12.1 北北東 20:24 23.6 北北東 20:54 991.1 23:15 ※総降水量は、19日17時から21日10時までの降水量。
●台風通過時の観測データ
台風第22号
(8日、9日)市役所における1時間値データ
(htmlファイル)市役所における10分値データ
(テキストファイル)
10月08日 10月09日市内6地点の降水量データ
(htmlファイル)台風第23号
(20日、21日)市役所における1時間値データ
(htmlファイル)市役所における10分値データ
(テキストファイル)
10月20日 10月21日市内6地点の降水量データ
(htmlファイル)
いずれの台風も、台風本体による雨は、それほど多く降りませんでしたが、亜熱帯高気圧の勢力が強かったため、南からの暖湿気流による雨雲や前線の雨雲が、台風の接近前に北上してきてまとまった雨を降らせ、総降水量が多くなりました。台風第22号の場合は、8日の夜から9日の昼前にかけて暖湿気流に伴う積乱雲のかたまりが通過し、台風本体による雨(15時から21時:降水量70.0mm)よりも多い114.0mmの雨が降りました。
台風第23号の場合は、南海上に停滞していた前線がゆっくりと北上したため、19日の夕方から20日の昼過ぎにかけて、1時間に3〜5mmの雨が降り続きました。また、台風は関東地方に近づく頃には西側から南側に乾燥した空気が入り込むようになり、南から流れ込む暖湿気流との境に沿って、帯状に発達した積乱雲が形成されました。この積乱雲がかかったため、日立市役所では19日23時10分から23時40分にかけて、29.0mmの非常に激しい雨が降りました。
今回の台風は、二つとも関東地方を通過する頃には勢力が衰えていましたが、南から湿った空気が入りやすい気圧配置が続いていたため、台風が日本の南海上に離れている時から雨が降り始め、総降水量が多くなりました。
●台風第22号と第23号の経路図
●台風通過時の気圧及び風速の変化と降水量の推移(日立市役所)
気象衛星の水蒸気画像は、上層から中層の大気の流れを視覚的に表します。台風第22号の場合、8日の画像を見ると、台風の北側をゆっくりと東北東へ進んでいた雨雲に、台風の東側を回るようにして北上してきた雨雲が一緒になり、21時には発達した大きな積乱雲のかたまりになったことが分かります。この積乱雲は北東へ進み、9日の明け方から朝にかけて、関東地方にやや強い雨を降らせました。
台風第23号の場合、20日09時には台風の西側に暗域で表される乾燥域が入ってきて、台風の形が崩れ始めています。午後には、この乾燥域は台風の南側から南東側へ入り込み始めています。そして、夜には乾燥空気と南からの湿った空気とがぶつかる台風の東側に、発達した積乱雲の列が発生しています。茨城県では、この積乱雲の列がかかって、22時から24時にかけて1時間降水量30〜40mmの激しい雨が降りました。
●参考:気象衛星水蒸気画像から見た雲の変化
雲の変化 |
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雲の変化 |
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●参考:地上天気図と気象衛星画像及び高層天気図
2004年10月09日09時の地上天気図 | 2004年10月20日09時の地上天気図 |
2004年10月09日00時の気象衛星赤外画像 | 2004年10月21日00時の気象衛星赤外画像 |
作成日:2004/11/22
訂補日:2004/11/29
訂補日:2013/06/09
名前 日立市天気相談所