「事実婚が流行して・・・結婚制度それ自体の崩壊へと進んでしまう」
という内容のこともかかれていますが、
法的保護の受けられる別姓結婚ができるのであれば、
「事実婚の流行」ということにはならないはずです。
けれども、
フランスのように事実婚が当然のこととして社会に受け入れられ、
婚外子が出生数の半分近くを占める国が現にあります。
(「フランスにはなぜ恋愛スキャンダルがないのか」
という本に書いてありました。)
日本で事実婚が流行し、
今ある結婚制度が崩壊したところで何が問題なのだろう、
という疑問は残ります。
また、「一年以内に既婚夫婦が別姓へと変更が出来るため、
このことが夫婦の間に争いの種をまき、
離婚騒ぎが増えることは必至」とあります。
さきに書いたことに通じますが、
パートナーが自分と異なる姓を名乗ることが
離婚にいたる争いにまでなるなら、
それはこの際離婚したほうがいい夫婦なのではないでしょうか。
まあ、これは言い過ぎとしても、このことに関しては、
問題があるのは「別姓」ではなく、「一年以内」のところです。
今回の法案にはいくつかの問題がありますが、
そのひとつがこの「一年以内」に「配偶者の同意を得て」変更できる、
ということだと思います。
「子どもの姓を巡っての夫婦間での奪い合い」とありますが、
これは、夫婦が互いに自分の家名を継がせたがる、
ということだと思います。
(別姓法案のおかげで、家意識が強まるわけですね。)
これも法案の問題点で、結婚届けを出すときに
子どもの名前をどちらか一方のものに決める、
というのを改める必要があります。
できるかどうか、つくるかどうかわからない子どもの名前を決めるのを
「トラタヌキ」というのではないでしょうか。
「祖先のおまつりや、お墓の維持に重大な影響を与え」るというのは、
なぜか別姓導入にいい顔をしない人たちにはたいへん説得力があるらしいです。
そういう人たちは、死んで骨になってからも、
お墓に花がそなえてない、とか、ワシの三回忌の供物をけちった、
とか言って化けて出るのでしょうか。
それではとうてい仏様などとは呼んでもらえませんよ。
「我が国の福祉制度を補完してきたともいえる『三世代同居』の風習」
というのは、
「我が国の福祉制度があまりにも貧しいためにしなければならなかった
『同居』の風習」と言ってもいいと思います。
老人にとって在宅介護が一番幸せ、
と主張した国会議員(今は首相をしていますが)もいました。
家族(主として女性)が面倒をみるのはあたりまえ、
美しい風習だと言われてきたおかげで、
政治家たちはまともな福祉政策を怠けていられたのです。
「夫婦別姓制は、女性を社会的不利益から守るものとされています。
しかし、夫と異なる姓を主張する嫁を、夫の親や親族が冷たくあしらい、
同族とは認めず親族からつまはじきにするような、
新たな差別の風潮を生み出す可能性も十分あります。
女性を助けるどころか、老年を迎えた女性自身の不利益を招く問題なのです。」
わっはっは。
夫婦も、家族も、学校も、社会も、国も、
それらを構成するのは個人です。制度が個人の選択肢をせばめて、
そこからはみ出す人たちに不利益を強いるのはまちがっています。
制度は個人に対して中立であるべきで、
モラルまで押しつけようとするのはもってのほかです。
「選ぶ自由」は個人の権利です。
今回の法案にはまだ問題点もあり、
それはこれから改善されていかなくてはなりませんが、
とにかく一歩踏み出さなくては。
「軽々に判断せず、国民の総意を踏まえて対処してほしい。」
(松岡利勝代議士)(5月22日)
たいていのことは勝手に決めてしまってから
「国民の皆様のご理解が得られると信じている。」
などとのたまう人たちが「総意を踏まえて」なんて言うと
笑っちゃいますが、
これで、幸か不幸か、考え、アピールする時間はあると
いうことになります。
いろいろな人たちがいて、制度が個人の生きていくやり方に口を出さない、
成熟した社会にしていきましょう。