民法の一部を改正する法律案要綱案
平成八年一月十六日
法制審議会民法部会
- 第一 婚姻の成立
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- 一 婚姻適齢
- 婚姻は満十八歳にならなければ、これをすることができない
ものとする
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- 二 再婚禁止期間
- 女は、前婚の解消又は取消の日から起算して百日を経過
した後でなければ、再婚をすることができないものとする。
- 女が前婚の解消又は取消の日以降に出産したときは、
その出産の日から、1を適用しないものとする。
- 第二 婚姻の取消し
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- 一 再婚禁止期間違反の婚姻の取消し
- 第一、二に違反した婚姻は、前婚の解消若くは取消しの日から
起算して百日を経過し、又は女が再婚後に懐胎したときは、その
取消しを請求することができないものとする。
- 第三 夫婦の氏
- 一 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の
氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
- 二 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、
夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければ
ならないものとする。
- 第四 子の氏
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- 一 嫡出である子の氏
- 嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に父母が離婚した
ときには、離婚の際の父母の氏)又は父母が第三、二により子が
称する氏として定めた父若しくは母の氏を称するものとする。
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- 二 養子の氏
- 養子は、養親の氏(氏を異にする夫婦が共に養子をする
ときは、養親が第三、二により子が称する氏として定めた氏)
を称するものとする。
- 氏を異にする夫婦の一方が配偶者の嫡出である子を養子と
するときは、養子は、1にかかわらず、養親とその配偶者が
第三、二により子が称する氏として定めた氏を称するものと
する。
- 養子が婚姻によって氏を改めた者であるときは、婚姻の
際に定めた氏を称すべき間は、1、2を適用しないものとする。
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- 三 子の氏の変更
- 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、
家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより
届けることによって、その父又は、母の氏を称することが
できるものとする。ただし、子の父母が氏を個とにする夫婦
であって子が未成年であるときは、父母の婚姻中は、特別の
事情があるときでなければ、これをすることができないもの
とする。
- 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異に
する場合には、子は、父母の婚姻中に限り、1にかかわらず、
戸籍法の定め
るところにより届けることによって、その父母の氏又はその
父若しくは母の氏を称することができるものとする。
- 子の出生後に婚姻をした父母が氏を異にする夫婦である
場合において、子が第三、ニによって子が称する氏として
定められた父又は母の氏と異なる氏を称するときは、子は、
父母の婚姻中に限り、1にかかわらず、戸籍法の定める
ところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を
称することができるものとする。ただし、父母の婚姻後に
子がその氏を改めたときは、この限りでないものとする。
- 子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、
これに代わって、1から3までの行為をすることができるもの
とする。
- 1から4までによって氏を改めた未成年の子は、成年に
達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け
出ることによって、従前の氏に復することができるものと
する。
- 第五 夫婦間の契約取消権
- 第七百五十四条の規定は、削除するものとする。
- 第六 協議上の離婚
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- 一 子の監護に必要な事項の定め
- 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき
者、父又は母と子との面会及び交流、子の監護に要する
費用の分担その他の監護について必要な事項は、その
協議でこれを定めるものとする。この場合においては、
子の利益を最も優先して考慮しなければならないものとする。
- 1の協議が調わないとき、又は協議をすることができない
ときは、家庭裁判所が、1の事項を定めるものとする。
- 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、1又は2による
定めを変更し、その他の監護について相当な処分を命ずる
ことができるものとする。
- 1から3までは、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を
生ずることがないものとする。
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- 二 離婚後の財産分与
- 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を
請求することができるものとする。
- 1による財産の分与について、当事者間に協議が調わない
とき、又は協議をすることができないときは、当事者は、
家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することが
できるものとする。ただし、離婚の時から二年を経過した
ときは、この限りでないものとする。
- 2の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産の
衡平を図るため、当事者双方がその協力によって取得し、
又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各
当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、
婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、
職業及び収入その他一切の事情を考慮し、分与させるべきか
どうか並びに分与の額及び方法を定めるものとする。この
場合において、当事者双方がその協力により財産を取得し、
又は維持するについての各当事者の寄与の程度は、その異なる
ことが明らかでないときは、相等しいものとする。
- 第七 裁判上の離婚
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- 一 夫婦の一方は、次に揚げる場合に限り、離婚の訴えを提起
することができるものとする。ただし、(1)又は(2)に掲げる
場合については、婚姻関係が回復の見込みのない破綻に至って
いないときは、この限りでないものとする。
- (1) 配偶者に不貞な行為があったとき。
- (2) 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- (3) 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
- (4) 夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしている
とき。
- (5) (3)、(4)のほか、婚姻関係が破綻して回復の見込みが
ないとき。
- 二 裁判所は、一の場合であっても、離婚が配偶者又は子に
著しい生活の困窮又は耐え難い苦痛をもたらすときは、離婚の
請求を棄却することができるものとする。(4)又は(5)の場合に
おいて、離婚の請求をしている者が配偶者に対する協力及び
扶助を著しく怠っていることによりその請求が信義に反すると
認められるときも同様とするものとする。
- 三 第七百七十条第二項を準用する第八百十四条第二項(裁判上の
離縁における裁量棄却条項)は、現行第七百七十条第二項の規定に
沿って書き下ろすものとする。
- 第八 失踪宣告による婚姻の解消
- 一 夫婦の一方が失踪の宣告を受けた後他の一方が再婚をした
ときは、再婚後にされた失踪の宣告の取消しは、失踪の宣告
による前婚の解消の効力に影響を及ぼさないもとのする。
- 二 一の場合には、前婚による姻族関係は、失踪の宣告の取消しに
よって終了するものとする。ただし、失踪の宣告後その取消し前に
された第七百二十八条第二項(姻族関係の終了)の意思表示の
効力を妨げないものとする。
- 三 第七百五十一条(生存配偶者の復氏等)の規定は、一の場合にも、
適用するものとする。
- 四 第六、一及び二は一の場合について、第七百六十九条(祭具等の
継承)の規定は二本文の場合について準用するものとする。
- 第九 失踪宣告の取消しと親権
- 一 父母の婚姻中にその一方が失踪の宣告を受けた後一方が再婚を
した場合において、再婚後に失踪の宣告が取り消されたときは、
親権は、他の一方がこれを行なうものとする。
- 二 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の
親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる
ものとする。
- 第十 相続の効力
- 嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分と同等とするものと
する。
- 第十一 戸籍法の改正
- 民法の改正に伴い、戸籍法に所要の改正を加えるものとする。
- 第十二 経過措置
- 一 婚姻適齢に関する経過措置
- 改正法の施行の際満十六歳に達している女は、第一、一に
かかわらず、婚姻をすることができるものとする。
- 二 夫婦の氏に関する経過措置
- 改正法の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、
婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、改正法の
施行の日から一年以内に2により届け出ることに
よって、婚姻前の氏に復することができるものとする。
- 1によって婚姻前の氏に復しようとする者は、改正後の
戸籍法の規定に従って、配偶者とともにその旨を
届でなければならないものとする。
- 1により夫又は妻が婚姻前の姓に復することとなったときは、
改正後の民法及び戸籍法の規定の適用のついては、婚姻の
際夫婦が称する氏として定めた夫又は妻の氏を第三、二に
よる子が称する氏として定めた氏とみなすものとする。
- 三 相続の効力に関する経過措置
- 改正法の施行前に開始した相続に関しては、なお、改正前の
民法の規定を適用するものとする。
- 四 その他本改正に伴う所要の経過措置を設けるものとする。
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